吉澤嘉代子は絵本の世界から来ている

俺、おっとりしてそうだったり、柔らかい雰囲気を持ちながらバチバチにセンス感じさせる女性が昔から好きで。で、そんな女性が今の音楽シーンにいるのよ、一人。

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俺が嘉代子ちゃん知ったきっかけは、ずっっっっっと前から好きなモデルの瀬戸かほが好きって言ってたから。んで、好きな人の好きなものは気になるじゃんか。そんで聴いたの。もうね、バーチバチに良い。びっくりした。多分瀬戸かほきっかけなくても好きになってた。だから、ちょっと騙されたと思って一曲聴いてくれない？

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どうでした？？ちょっとでも良いかもって思ってくれたら、もう少し読んでみて。彼女の魅力を出来るだけ簡潔にわかりやすく紹介するからさ。

妄想系シンガーソングライター

最近でこそ聞かなくなったが、数年前までは彼女は妄想系シンガーソングライターと呼ばれた。そう呼ばれたのは、嘉代子ちゃんの作詞の方法にある。嘉代子ちゃんは、頭の中で物語を描いて、その物語の主人公になりきって詞を書く。だから、嘉代子ちゃんの楽曲からは幻想的な情景が浮かんでくる。そのころは、まるで絵本の世界からやってきた人みたいだな、とか、開けたら物語が曲になって流れる魔法の絵本みたいだなとか、とにかくそんな印象を受けていた。

しかし、それも少し前までの話。大ヒットとなった「残ってる」では、朝帰りの大人の女性を描き、昨夜の貴方がまだ残っていることを、少し官能的な詞で見事に表現し、それは絵本なんかじゃなくて小説をまるまる落とし込んだような曲だなという印象を受けた。

嘉代子ちゃんのこの作詞方法では、老若男女どころか、漫画の主人公と恋する女性からだったり、人魚視点の曲だったりなんでもござれ。多分森羅万象ありとあらゆるものの視点から作詞できそう。想像力が中二男子。豊かって意味です。

女性心理を描く上手さと独特な声質　

嘉代子ちゃんの曲を初めて聴いたとき、一番印象が強かったのが声質で、まるであどけない少女のようでもあって、凛とした大人の女性のようにも聞こえるような声だなと思った。先の段落でいろんな視点からの曲があると書いたが、しかし嘉代子ちゃんの曲は女性視点の曲が圧倒的に多い。しかもいずれの曲でもそれぞれ違った女性らしさを持った女の子が登場するので聴いていて飽きない。

もういちど　あなたに言いたい

女にはアボカドなんて決めつけないで

わたしはわたしだよ

海老アボカド　たしかに注文したけれど　

これとか最高に女。こっちが女だしアボカド好きだろなんて感じで言うと、そんな風に決めつけるなと一度否定するくせに結局アボカド頼む。yonigeじゃねえけどアボカド投げんぞ。俺が働いてた居酒屋でアボカドの注文はたいてい女だったからデータとれてんだよこっちはよお。閑話休題。

らりるれりんって曲では、今夜電話すると彼が言った言葉に、電話のベルを待ちわびて終いにはどんな音も電話のベルに聞こえてくる女の子が描かれてたり。

こういう恋焦がれる心情とか、好きを素直に言えないみたいな、ありふれた女性の心情を描くのがべらぼうに上手い。また、少女の恋愛模様だけでなく大人の女性の恋愛模様も歌うのだが、それに嘉代子ちゃんの声質はハマりすぎてる。ただでさえズバ抜けて女性心理が上手いのに、その要素が加われば、向かうとこ敵なし。鬼に金棒。

は？そのうえに歌もうまいの？

作詞と声で女性心理を最大限に表現して、さらに歌唱力までヤバい。ヤバいって言葉は便利すぎてあまり好きではないけど、もうそれに頼らざるを得ないほどヤバい。埼玉が生んだバケモノ。

特に腹式呼吸がうますぎる。声に立体感があるというか、奥行きがある。かと思えば途端に綺麗なファルセットに切り替わる。でも特にヤバいのが低音。声にグッと力が入るところ。あとたまーにだけどその部分に小さな濁点がついたような音になるときがあって。こんな一つ前の世代の少女漫画のヒロインみたいな可愛らしいルックスからそんな声出されたらギャップにやられるに決まってる。綺麗なファルセットや低音の緩急で、優しく歌ってくれてたと思えば力強く歌ったりすることで俺らリスナーの耳を、いや鼓膜を支配する女なんですよこいつは！！！クソが、もうお前なしで生きてけねえよ俺は。頼むから結婚してくれ...。