忘れないように

単に記憶力が著しく悪いのか、それとも他に何か原因があるかわからないけれど、年々忘れてしまうことが増えています。その時を生きていた俺が死んでいるような、もう二度と手に入らないものがこぼれ落ちていってるような、そんな気がしてもうこれ以上失いたくないので、日々を書き留めたい気持ちがこのブログです。

沖縄行きたい!!!

 

    京都を離れて沖縄に移った高校時代の友人が、数日帰ってくるということで会うことになった。以前は半年に1回のペースで帰省してして、その度に会っていたけれど今回の帰省は1年以上ぶりということなので、1年半ぶりくらいに顔を合わせた。

 

   待ち合わせ場所について、久しぶり、なんて言いながらランチを食べる道を2人でゆっくり歩いた。1年半ぶりだからそれなりに積もる話もあるはずなのに、軽く近況の話を済ませると、店を出て鴨川沿いで2人並んで座っている時にはただ何も喋らず川のせせらぎを聞いていた。

 

   「川の音って落ち着くよな」

 

    不意に思っただけのことを言ってみた。すると相手は

 

「わかる、この間寝る時雨の音を流したらよく寝れたしそれから寝る時雨の音流してる」

 

   と言った。

 

    「え、俺も。なんなんやろなあれ」

 

   「α波かなんかなんちゃう?」

 

    「そういうもんなんかー。まあなんでもええけど。」

 

    こんな身も蓋もない会話を時折交わしたくらいだった。別に仲が悪いわけではない。むしろ安心しているからこそそれくらいの会話でいいのであって、そうじゃないなら沈黙も耐えられないし、間を埋めるにももう少し会話が続くような話を選ぶし。

 

    「そういや会う前は何してたん?」

 

    なんとなく気になったので聞いてみた。

 

    「神社にいってた。京都を離れてから気づいたけど、沖縄の人達は自分の住んでるところをちゃんと好きで誇りに思ってるから沖縄のことをよく知ってはるけど、京都に住んでたら有名な神社もお寺も、いつでも行けるからこそなかなか行かへんし、金閣寺とか清水寺も小学生の頃社会見学で行ったことがあるだけで実際何も知らんようなもんから、行きたいなと思って。」

 

    「たしかに小学生で社会見学で寺とか神社行ってもまだ良さに気づける歳じゃないもんなあ。俺高校生でも無理かもしれん。せやし、俺もたまに今の歳になって誰かとそういうとこ行った時、めちゃくちゃええとこやなって気づくし、行くの好きやわ」

 

    「じゃあこのあと鈴虫寺一緒に行く?」

 

    「ええな。行く。俺も前から行ってみたいと思ってた所やし。」

 

    「でもまだお腹いっぱいで動くんしんどいやからもうちょい後やけど」

 

    「それはたしかに

 

    そこからまたしばらく川のせせらぎをただ聞いていた。俺は川沿いを歩く鴨が可愛かったのでただそれをぼうっと見ていた。お尻が薄い俺は、ちょっと座っている状態がしんどくなってきたいたけど、もし座っているのが川べりの地面じゃなくてフカフカのソファだったらこのまま何時間でも過ごせるなと思った。無言でただ並んで座っているだけなのに、それほどに心地よかった。

 

    「ごめん、やっぱり1人で行くことにする」

 

    唐突に相手がそう言った。

 

    「どしたん急に」

 

    「いやあ、神社とかお寺って1人で行くほうが落ち着かへん?」

 

    「それはまあわかる」

 

    「それになんか今日はあんまり自分の波長が人と過ごすのが向いてない波長になってる気がする」

 

    「ああ、そういうことな。その波長もすごいわかるから、それならそれは1人で行ってき。」

 

    「年末帰ってくるかどうかはわからんけどまあいつかは絶対帰ってくるしまたその時会えたら会お。帰る予定決まったら連絡するし。じゃあね、ばいばい。」

 

    「おっけー、じゃあそんな感じで。じゃあね、ばいばい。」

 

    そう言ってあっさりと解散した。1年半ぶりに会って、1時間半くらいの間一緒にいながら、時折会話を交わすくらいしかなかったけど、それなのにとても充実していた。1年半ぶりに会って、また次いつ会えるかわからないのにのに短時間であっさり解散したことは少し寂しくあったけれど、まあ今度はもう少し長く会えたらいいやと思うことができた。いい関係を築けている気ようなした。

 

    思っていたより早い解散だったので、時間を持て余したからたまに訪れるカフェに入った。ふと、ご飯を食べている時に聞いた相手の沖縄での暮らしについての話を思い出した。

 

    「沖縄はさ、みんな必要以上に干渉してこないから合ってると思う。毎日楽しいし。」

 

    「多分、私は社会不適合者の側なんやと思う。でもやからこそ、必要以上に干渉されなくて、みんながそれぞれ好きに生きてて、それを別にいいじゃんってみんなが思えてる今の環境がすごくいい。」

 

   「こっち戻ってきてみんなが下見ながら足早に歩いてるん見て私はこうはなれへんしなりたくないなと思ったし。」

    

    小学5年生の頃、家族で沖縄に旅行したことがある。その時、なんか時間の流れが独特な場所だなと感じた。時間がゆっくり流れているわけでもなければ、早いわけでもない。言い表し難いけど、言うならば時間の流れが不安定みたいな。でも不安定なのに居心地が悪くない。むしろ良い。

    多分、みんなそれぞれ自分の好きなように生きててそれを許容しているから、せっかちな人もいればそうでない人もいて、でもそれにお互いが無関心(尊重している、許容しているとも言える)だから、時間の流れを一般化してそこにみんなを当てはめていない分、時間の流れが統一化されてないんだろう。不安定なのに居心地が悪くないのも、きっと自分の時間の流れ方を確保されているからだ。沖縄という場所ならどこだろうとそうなってるとは限らないだろうけど、土地柄の特徴とか民族性?にそういう傾向があるんだろうな。

 

    いいな、沖縄。まだ俺はもう少し頑張れそうだけど(何に対して頑張ろうとしているかは自分でもわからない)、完全に疲れきったら沖縄に移り住むのもありかもな。