忘れないように

単に記憶力が著しく悪いのか、それとも他に何か原因があるかわからないけれど、年々忘れてしまうことが増えています。その時を生きていた俺が死んでいるような、もう二度と手に入らないものがこぼれ落ちていってるような、そんな気がしてもうこれ以上失いたくないので、日々を書き留めたい気持ちがこのブログです。

見せないままでいいじゃないか

 

    人間誰しも見られたくない一面とか見せたくない一面がある訳じゃないですか。あるでしょ?俺にだってある。

 

    俺の友達の大体は明るくて気さくな奴が多いんだけど、そんなんだからきっと結構異性にモテるんですよね。だから友達と飲んでたりすると「この間ヤッた女が〜」だとか「ナンパした女が〜」みたいな具合の話題が多いわけ。俺はそれをお前らほんといつまで経ってもバカだなみたいな顔して、如何にも俺はそういう時期も過ぎて今は丸くなりましたみたいに聞いてるんだけど、本当の所は別に俺は気さくでもないし面白くもないので異性にモテない。

    だから、俺が大学1回の頃の彼女と初めて性行為に及んだ夜にゴムの付け方がわからなくて焦ってた俺、結局勃たなくて彼女と気まずくなった時の俺、その次の日彼女の姉に「昨日勃たなかったんだって?そんな時もあるって!どんまい」って言われて恥ずかしさと気まずさで複雑な顔で苦笑いして「疲れてたんですかね」とか言ってた俺を友達には見られたくない訳です。

 

    そういう見られたくない一面が誰しもにある。例え家族だろうと見られたくない一面はあるし、寧ろ家族だからこそ見られたくない一面もある。

 

    兄弟や姉妹がいる人ならわかってくれると思うんだけど、交際相手の前でいる自分の兄弟姉妹は見たくなくないですか?俺は見たくないです。

    父親が若い女と話してて鼻の下を伸ばすところ、飲食店の若い店員に女の顔をチラつかせる母親、交際相手と性行為に励む自分の兄弟姉妹。想像してみてください。地獄です。

 

    話は少し変わって昨日の夜。我が家のWiFiはまさに「ないよりはマシ」って言葉がピッタリな程ポンコツで、2階の俺の自室だと急に回線が切れたりすることがあるので、我が家に置いて唯一の快適にWiFiが使えるリビングへと俺は下りた。

    イヤホンをして音楽を聴きながらリビングへと入ると、そこには背を向けて俺と同じくイヤホンをしてくつろぐ弟がいた。特にそれに気を留めず俺はYouTubeで好きなアイドルのMVを見たり、アップデートされたゲームなどをして1時間ほど過ごした。

    そろそろ自室に戻るかと思ってイヤホンを外すと、どうやら弟は誰かと電話をしていたようだ。相変わらず俺がいることには気付いていない。今更わざわざおやすみなんて言葉をかけるほどでもないので黙って戻ろうとリビングのドアに手をかけた時、それは聞こえてきた。

 

    「もう寝るのぉ…?…ハッ…。そっかぁ…。…じゃあ早く寝てぇ…ハッ…。おやすみぃ…ハッ…。」

 

    昔ツイキャスが全盛期の頃に聴いたことがあるような、えげつないくらい吐息を織り交ぜて話すキャス主みたいな話し方は、紛れもなく弟の声だった。

 

    そう言えば父親から聞いたことがある。どうやら今あいつは彼女という存在がいるらしく、ということは恐らく通話相手は彼女なんだろう。

 

    その声や話し方がもう本当にすこぶる気持ち悪かった。そんな弟を見たのは初めてだったし、出来ることなら見たくなかった。いっそのこと俺がいることに気付いてくれて「初見さんいらっしゃい」なんて言ってくれたら俺も笑えたしどれだけマシだったろうか。そんな出来事が昨日の夜あった。

 

    家族相手でも、むしろ家族だからこそ見せたくない見られたくない(同様に見たくもない)一面がある訳だから、ましてやそれが友人相手となるともっとあるだろう。

 

    たまに「お前にだからこんな一面を見せられるけど〜」なんて話し始めで自分の新たな一面を出してくる人がいるけれど、別に無理しなくたっていいんです。自分の全てをさらけ出さなくたって人との関係性なんて十分に深まるし、対人関係なんて、ごめんって言って謝る心といいよって言って許せる心があれば何度だってやり直しがきく。そういうやり取りを何度も踏まえて関係性は深くなっていくものなんだろうなって俺は思います。

 

    だから本当に、見せたくない一面や見られたくない一面があるならわざわざ見せてくれなくたっていい。ずっと見せないままでいい。そんな事しなくたって、これを読んでる君が誰かは俺は分からないけれど、俺と君は十分に仲がいいよ。そういう話。それでは。