無題

タイトルとか考えるのが恥ずかしい

目に写る"それ"は嘘か真か

 

    新しく始めたバイト先がこれまで使ってた銀行口座が使用できないとのことなので、別の銀行口座を開設しに近所の銀行へと足を運んだ。

    しばらく待ってると、待ち番号を呼ばれて席へと。きっとハチャメチャに優しいんだろうなって印象を受ける笑顔が素敵な女性が対応してくれる。

   ザッと説明を受けて早速口座開設の手続きへと移る。こちらの用紙の記入をお願いします、と紙を渡される。受け取ると、女性は少々お待ち下さいと奥へと引っ込む。

    口座を解説するだけで、微塵も綺麗な女性と接すると思ってなかった俺は携帯を取り出しインカメで軽く身だしなみを整える。

    うん、顔はいつも通りだ。少し寝癖が気になるので、そこを手ぐしで溶かしながら用紙を記入していく。

    少しすると女性が戻ってきたので、俺は書いた用紙を渡す。では、身分証明書のご提示をお願い致します、と女性。

    情けないことに俺はまだこの歳で運転免許を持っていない。学生証はダメなことは事前に承知していたので、俺は持ってきていたパスポートを渡す。

    が、しかし。確認を怠っていたがどうやらパスポートの期限が切れていた。保険証はダメですよねと聞くと、保険証だとまた別に顔写真のある身分証明書が必要らしい。

    後々、顔写真付きの身分証を提示してくれれば大丈夫とのことで、キャッシュカードなしで開設してもらうことで、俺は銀行を後にすることができた。

 

    最近では身分証明の基準が法的に高まってきて、以前より厳しくなっているらしい。この日、俺は現状身分証明が出来ないという事実を突きつけられた。

    身分証明が出来ないということはつまり俺が俺であることを証明出来ないと言うことだ。

   その事実に気付くことで、俺はひとつの不安を覚える。もしかして俺は俺ではないのかもしれないのだろうか。

    昨日友人と話してた俺、先週の俺、先月の俺、去年の俺、それよりもっと以前の俺、その全ての俺は本当に俺だった?

    これまでに積み重ねてきたアイデンティティがガラガラと音を立てて崩れ落ちていく。精神面的な意味での自覚を失うと、次にはいよいよ視覚的な自分にまで疑いの眼差しが生じた。

    さっき身だしなみを整える際に見た携帯に映る俺は本当に俺だったのだろうか。鏡や写真に写る自分を見て、俺は自分を、背が高くて、少し色白で、鼻が低くて、まつ毛は少し長く、歯並びは整っていなくてそれでいて前歯がやや大きく、髪は太くて硬くややくせっ毛なルックスの人間だという認識で生きてきた。

    本来ならこんなことを疑問に思うことはないだろうが、自分が自分であることを証明出来ないというきっかけによって、生まれるはずのない疑問が生まれた。

 

    あなたはこれまでに、あなたが見たり感じることで積み重ねてきた認識や見解を疑ったことがありますか。

    恐らくないでしょう。俺だって今の今までなかったんだから。あなたの目に写るものや感じたことの全ては、それがあなたにとって真実であり、答えなのだから。

 

    でも、もしかすると。それはあなたにとって正解に見えるだけで、傍から見れば全然違うものかもしれない。あなたが赤色に見えたものも、他の人からすれば青色だったり、白だったり黒だったりするかもしれない。ガラスとか鏡に写るあなたがこれまでに自分と認識してきた人の姿もあなたじゃないかもしれない。

 

    早い話、客観的視点を持つことは大事だよって話です。目に写るもの全てをそのまま信じるんじゃなくて、1度疑いの目を向けてみたらもっと世界は広がるんじゃないでしょうか。そんな話です。オチはないです。

 

    それじゃあ。